井田はどこへ行くにもスケッチブックを離さなかった。数々のスケッチ旅行や取材旅行を通して行く先々で描かれたこれらの作品には、現場での躍動感や感動が、素直なタッチや色づかいの中に生き生きと伝わってくる。その一方で、ライフワークでもあった上州の茅葺き民家を記録的に描いた70点近いスケッチを、自らの取材分を添えて「民家を描く」という画集として1992年に出版している。また井田は、日々の身の回りにある草花も非常に愛し多くスケッチに残している。
「虫の声、鳥の声、路傍の草花、色を変え重なり合う木の葉、そしてせせらぎの音。こんなにも素直に心に浸み入るものがあるだろうか。やさしさの心は自然から学ぶことが多い。だからあまり急がず、おいしい空気を胸一杯吸いこんで。ゆっくり歩きたいものである。」
(1990年8月 「民家を描く」記事より)
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